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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月5日 No.3685 筒井会長就任あいさつ

このたび、会長に選任いただきました筒井義信でございます。重責に身の引き締まる思いです。会員の皆さまのご支援、ご協力をいただきながら、職務を全うすべく全力を傾注してまいります。どうかよろしくお願い申し上げます。

はじめに、十倉前会長におかれましては、コロナ禍でのご就任という大変厳しい状況のなかにあって、就任当日にはワクチン接種に関する緊急提言を公表するなど、コロナ対策と経済活動の両立に極めて迅速に対応されました。そして、「社会性の視座」のもと、「分厚い中間層」の形成、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現等に類まれなリーダーシップを発揮され、経団連の内外での存在感を格段に高めてこられました。心からの敬意と謝意を表したいと存じます。

私は新会長として、十倉前会長の集大成である中長期ビジョン「FUTURE DESIGN 2040」(FD2040)をしっかりと継承してまいります。そして、「成長と分配の好循環」の実現、「公正・公平で持続可能な経済社会」の構築に取り組んでまいります。

足元、世界は近年ないほどの危機に直面しております。戦後営々と築かれてきた国際秩序は、米中対立の激化等により、大きく揺らいできています。米国が打ち出している関税政策は、各国の繁栄の礎となってきた自由貿易体制に深刻な影響を及ぼしかねません。また、地球環境問題への対応は喫緊の状況にあります。国内では、少子高齢化・人口減少、資源・エネルギー制約、財政・社会保障制度の持続可能性をはじめとして、構造的かつ複雑な課題がまさに山積しております。

この混迷の時代にあって、数々の難題に真正面から立ち向かい、打開策を見いだすことこそ、経団連に課せられた使命です。現下の危機に迅速に対応するとともに、中長期の観点からFD2040の実現に向けたロードマップを描き、「科学技術立国」と「貿易・投資立国」による確かな成長を目指してまいります。

具体的には、次の五つの政策分野に重点的に取り組んでまいります。

第一は、イノベーションです。わが国産業の国際競争力強化に向けて、「科学技術立国戦略特別委員会」を新設し、教育から基礎研究、応用研究、社会実装、産業競争力強化を一気通貫で深掘りし、抜本的な改革戦略を取りまとめてまいります。また、成長のカギを握るデジタルトランスフォーメーション(DX)、GX、スタートアップ振興等への継続的な取り組みに加えて、AI・デジタル、ロボット、半導体、宇宙、バイオ、エンターテインメント・コンテンツ等の新たな成長分野への投資拡大も目指してまいります。

第二は、税・財政・社会保障の一体改革です。わが国の社会保障制度を持続可能なものとすべく、財政健全化に不断に目配りしながら、給付と負担のあり方に関し、税を含む一体的な改革の実現を強く求めてまいります。

第三は、地方創生です。活力あふれる地域経済社会の実現に向けて、現行の地方自治体の垣根を越える、より広い圏域でのバーチャルな広域連携として、「新たな道州圏域構想」を視野に検討を進めてまいります。

第四は、労働改革です。「物価上昇に負けない賃金引き上げ」を持続可能なものとするためには、企業の生産性の改善と向上が伴わなければなりません。円滑な労働移動の推進や、裁量労働制等、労働法制の抜本的な見直しを求めてまいります。

第五は、経済外交の強化です。わが国が「貿易・投資立国」としての道を歩むためには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化が不可欠です。同志国と連携し、国際的なルール形成などにおいて、日本がリーダーシップを発揮するよう政府に働きかけてまいります。また、新たに「グローバルサウス委員会」を設置し、成長著しいグローバルサウス諸国との連携強化に取り組むなど、わが国が持つソフトパワーも活用して民間経済外交を積極的に展開してまいります。

申し上げましたこれら五つの取り組みをはじめ、成長を支える基盤として、安価で安定的なエネルギー供給の確保が絶対に不可欠です。その大前提に立って、「第7次エネルギー基本計画」の具体化と着実な実現に注力してまいります。

最後に、こうした難しい時代だからこそ、企業がフロントランナーとしてわが国の進むべき道を示し、強い覚悟を持って未来を切り拓いていくことが不可欠であると考えます。常に世界の動きを見据え、「中長期の視点」と「日本全体の視点」、この二つの視点を大切にしつつ、「将来世代への責任を果たす経団連」を目指してまいります。ぜひ、皆さまのご理解とご協力を重ねてお願い申し上げる次第です。

以上、私の就任のあいさつとさせていただきます。

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